大事な付箋

NOZOMI(中3)                               

 『今日のハンバーグ美味しかったよ!やっぱママのハンバーグは最高。また作ってね。』
 そう、いつもの付箋に書き、弁当箱に貼る。

 この付箋は中1の時から続けてきた。母は毎朝四時に起き、五人分の弁当を作っている。冷凍ではなくすべて手料理だ。その後休まずに仕事に行く。夜、十九時くらいに帰ってすぐ家族の夜ご飯を作る。母は疲れた、と一切言わず家事をこなしている。きっと自分だったら疲れ切って母のように動けない。

 リビングで母の疲れがたまっている寝顔を見ていつもありがとう、と伝えたいと思った。しかし直接言うことは恥ずかしくてできない。何ができるかな、と考えた時一番にでてきたのが手紙だった。手紙なら思いを書くだけだから、簡単だ。しかも紙だから捨てない限り残るから何回も見返せる。直接手紙を渡すのはやっぱり恥ずかしい。あ!毎日、作ってくれている弁当箱に付ければ喜んでくれるかな。

 初めての手紙はこう書いた。
『いつもあたたかいご飯をありがとう。とってもおいしい。でも、大変だよね。無理しないでね。』
 これを読んだ母は
「ありがとう!そう言ってもらえると頑張ろうと思える。疲れふっとんだよ。」
 と喜び、付箋を冷蔵庫に貼った。

 母の疲れが吹っ飛んだ、という言葉でこれから毎日手紙書こうと決めたのだ。
 今ではもう冷蔵庫は付箋でうまっている。母の喜んだ顔を見るたびにこれからも続けようと思う。




テーマは「手」でした。

 お母さんが作ってくれる手料理と、NOZOMIさんがお礼を手書きした付箋の手紙、お二人の手が重なって優しいエピソードになりました。

 一番印象に残ったのは、冷蔵庫の表面を埋め尽くすように貼られたたくさんの付箋たち。写真を見せてもらったわけでもないのに、その光景は、一つの幸せな光景として鮮明に頭に浮かびました。目には見えない感謝や愛情が、目に見える形となってそこにあり続ける、しかも増え続ける付箋と冷蔵庫が幸せの象徴のように感じられました。

 さて、今回の題材は日常の中から見つけてきてくれたものです。書く題材を選ぶ段階で、作文の半分は決まってしまうと言っても良いかもしれません。それくらい、題材探しは大切だし、簡単なことではありません。ですから特別なイベントなどなくても、こんなにも印象的な題材を見つけられることこそがNOZOMIさんの作文を書く上での強みになっています。

 今後、NOZOMIさんの目にはどんな出来事が映るのでしょうか。楽しみです。

塾長

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