雨の日

AYANE(中2)

 ヘッドホンの電源が切れる音で目が覚めた。現在時刻午前四時。いつも起きてる時間まで一時間半、曖昧な時間に起きてしまった。

 ピーッピーッ。
 アラームが私を深い眠りから現実へと導く。いや導かれたくないのだがと思いながら、嫌々自分の部屋から出る。

「あ、起きたのね、おはよう。」
「うん…おはよう…。」
 親と軽く挨拶を交わし、学校へ行く準備をする。日焼け止めを手、腕、首、顔の順番で塗る。
 次に制服に着替える。シャツを着てズボンを履く。なんかももの辺りが変な感じがする。ベルトを軽く締め靴下を履く
 リュックを背負って、マスクをつけて、鍵持って、携帯持って、靴を履いて、家を出る。

 そろそろうどん屋さん出来たかな、と思いながら、商店街を進んでく。曇りだから紫外線強いな。
 うどん屋さんの前まで来た。張り紙には六月末オープン!と書いてあるが今日は六月最後の日だ。店内(になるであろう場所)を覗くと内装がほとんど出来ていない。何かあったのであろうか。
 携帯を見ると「7:38」そろそろ電車が来るので駅に入ろう。

 授業が終わり、放課後友達と遊んで帰ることになった。校舎から出ようとしたら小雨が降っている。朝の違和感はこれか。
 僕はいつもリュックに折りたたみ傘を入れているため雨に濡れることは無かったが、友達のサソーはあいにく傘を持っていなかったらしく雨に濡れていた。
 サソー曰く「蒸し暑いから雨に濡れた方が涼しいよ。」だそう。相変わらずサソーのキメ顔は面白い。

 サソーと別れて家路に着く。家のほんとに近い信号から傘はささずに歩いた。確かにサソーの言ってた通り、雨にあたった方が少し涼しかった。




「しるし・サイン」というお題で書いてもらった作文です。

 AYANEさんが見つけたのは、雨のサイン。気にしていなければ見落としてしまいそうな小さなサインは、朝の準備の時間の中に紛れ込んでいました。

「学校へ行く準備をする…次に制服に着替える。シャツを着てズボンを履く。なんかももの辺りが変な感じがする。ベルトを軽く締め靴下を履く…」

 いつも通りの準備の中に、ふと紛れ込んでいた違和感(ももの辺りが変な感じがする)に気づいて作文の題材にできたことがまず素晴らしい!こういう気づきができれば、日常は題材の宝庫となっていきます。

 さらに今回感心したのは、この違和感の書き方です。大袈裟に気づいた様子を書くのではなく、あくまでいつも通りの準備の流れの中でさりげなく書かれているのがとても良かったです。それによって、このサインがAYANEさんだけが気づけるほどの小さな出来事であることも伝わってきます。

 また、その直後に続く

「リュックを背負って、マスクをつけて、鍵持って、携帯持って、靴を履いて、家を出る。」

の部分も印象的でした。ここでAYNEさんは「。」ではなく、各動作を区切るために「、」を使い、短いフレーズで次々と繋いでいきます。このことで各動作にスピード感と臨場感が生まれました。他の生徒にも好評だった部分です。

 その後は、登校途中のうどん屋さんや様々なことに反応する様子から、くるくると変わっていく主人公の心の動きが分かり、読んでいて楽しい作文でした。また、出番は少なかったものの友人サソーも魅力的で、物語の大事な登場人物に育って行きそうな予感さえ感じました。

 等身大の中学生の今が感じられるAYANEさんの作文は、短編小説のワンシーンを読んでいるようで、主人公と友人サソーの物語をもっと読んでいたいなぁと感じさせてくれるものでした。

塾長

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