二人の距離

起 : MISAKI(中2)

 「またそれ買ってる。いつも買ってるじゃん。それ。」
「だってこれ気にいってるんだもん。そうゆうあんたは新作しか買わないじゃん」
「いいじゃん別に。」
 私たちが自販機の前でしゃべってると
「買うのか?買わないならどけ邪魔だ。」
 後ろからゆうたの声がした。
「何その言い方?もう行こ。」
「うん…。」
 ちょっと名残惜しく教室に戻る。日南には言えないけどわたしはゆうたのことが少し気になっている。

承 : HITOMI(高2)

 次の日の休み時間もまた、ゆうたに会えることを期待して自販機に行く。今度は一人で。
(そんな簡単にいるわけないよな〜。)
自販機には誰もいなかった。とりあえず何か買って帰ろう。何を買おうか迷う。
(昨日ゆうたはここで何を買っていったんだろう…。)
気づけばそんなことまで考えてしまうようになっていた。本当に少し気になっているだけなのに。しばらく自販機の前でぼーっと立ちすくんでいると、後ろに気配を感じた。
  後ろを振り向くと、やっぱり人がいる。目が合った。私は自分の顔が赤くなっていくのを感じた。

転 : SACHI(中2)

 あわてて前を向く。ゆうただ。会えた。舞い上がったのも束の間、冷たい声が上から降ってくる。
「買うのか?買わないならどけ、邪魔だ。」
 昨日と同じセリフ。この冷たさが好き。なんてね。そんなことを思っている自分に半ばあきれながらも口角が上がる。
「おい。」
「あっ。」
 ようやく決めた私が押そうとして伸ばした指としびれを切らしたゆうたの指が重なる。思わず声がもれた。そして二人でボタンを押した。驚きすぎて体が固まる。顔から火が出そうなくらい熱い。
「おぅ、すまん。」
 ゆうたが呟くように言う。あれ、ゆうた意外と素直じゃない?
「お前、顔がゆでだこ。」
 そうゆうたは言うと、教室の方へと歩いて行った。ひどっ。そう思ったけれど、ゆうたに興味を持ってもらえたように思えて少し嬉しく感じている自分にあきれる。いつか少しでも仲良くなれたらいいなと思いながら、さっきゆうたと押したボタンをもう一度押した。

結 : NOZOMI(中2)

 次の日もまた次の日も同じ時間に自販機の前でゆうたと会った。約束もしていないのに私がジュースを選んでいたら、ゆうたが来るのがいつもの流れ。これってわざと私と会うために時間を合わせてくれているのかな。もしそうだったら嬉しいがきっと偶然なだけだろう。
 今日も自販機に行く。選んでいるとやっぱりゆうたが来た。
「どけ。」
 またいつもの言葉。もっと会話をしたい。このままだと後で後悔するかもしれない。思い切って質問することにした。
「部活…」
「お前…」
 え。今ゆうたと私、同時に言った?まさか。
「またお前と重なってしもうた。」
「う、うん。そだね。」
 お互い笑いが止まらない。ゆうたは手を叩いて笑っている。
「ゆーた。はやくー。」
 遠くでゆうたを呼ぶ声がした。
「じゃあ、話の続きは明日な。」
 私がこっくりうなずくと走って教室の方へ戻っていった。私はその背中を見ながら返事をした。
「また明日ね。」


「自動販売機」をテーマに書かれたリレー作文です。

 テーマの自販機が学校に置かれていること、そこが淡い恋の舞台になっていること、まずはその設定がお見事でした。
 起承転結を通して場面は同じ、つまり自販機の前しか出てこないことが、登場人物の関係性や心の有り様の小さな変化をうまく目立たせてくれています。また、二人の変化に伴って、自販機の前という当たり前の場所がどんどん重要で特別な存在になっていくのが面白かったです。そのように感じられたのは、四人がうまく連携できていて、一つの物語を途切れることなく紡いでいけたからでしょう。互いの文章を大事に扱いながら、よく考えて書かれたリレー作文でした。特に、淡い恋の物語を同じ温度で描けたところはさすがでした。

塾長

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