サイエンスおばあさん

起:HIDEHIRO(中2)

 むかーしむかし、あるところにお爺さんとお婆さんがいました。お爺さんは鉱山にウラン採取に、お婆さんは川に水質汚染の調査に行きました。お婆さんが川で水質汚染の調査をしていると川上から大きな自動販売機がどんぶらこ、どんぶらこと流れて来ました。

承:CHIAKI(高1)

 「あぁ、なんて大きな自動販売機だ。家に持って帰って、お爺さんにも見せてやろう。」
 お婆さんは水質汚染の調査そっちのけで、大きな自動販売機をえっちらおっちらと運び始めました。
 どのボタンを押そうか。お爺さんとお婆さんは考えます。何が出てくるか、わかりません。
「ピッ、ガラ、ゴトッ」
 真ん中のボタンを押してみると、変な音がして、何かが出てきました。ボトルに液体が入っています。少し砂も入っていました。
「きっとこれは川の水だ!」
 お婆さんはわくわくして、そう言いました。

転:HITOMI(高2)

 川の水の入ったボトルなんて、自動販売機から出てくるはずがありません。しかしお婆さんはそんなことを不思議に思わずに、水質汚染調査の道具を取り出して、調査を始めました。音速で器具を操作して、お爺さんを茫然とさせます。というのも、お婆さんは昔、研究者だったのです。女性の研究者はあてにされていなかった時代でしたが、お婆さんは男性の研究者たちに混じって、研究一筋で生きてきた人なのです。お爺さんは、お婆さんの邪魔をしないようにそっと、ウラン採取の続きに出かけました。
 しばらく経って、お婆さんは調査の結果を確かめます。チューブに吸い込ませた川の水の色の変化とそれに対応するCOD、つまりどれくらい川が汚染されているかを示す数値を比較するのです。CODの値が大きいほど水は汚染されていて、河川の下流のCODは2~10とされています。今回の結果は5でした。CODが5だと、コイやフナが住める程度の水です。ヤマメやイワナが住めるほどのきれいな渓流ではありません。
(まあまあ汚いのね…)
お婆さんは水質を改善させるための解決策を考え始めました。

結:YUKI(中3)

 お婆さんは研究を始めました。その水の中の成分を調べてみると、ウラン廃棄物(放射性物質)が少量含まれていたのです。お婆さんは落胆しました。なぜなら、このウラン廃棄物はお爺さんが採集したウランを再転換したときに出た放射性物質だったのです。理由はそれだけではなく、放射性物質は長い時間をかけなければ取り出せないのです。
 しかしお婆さんは諦めませんでした。この水をなんとかして、きれいにしたかったのです。諦めかけていた放射性物質の研究のきっかけができたのです。お婆さんは寝る間も惜しんで研究を続けました。
 一週間、一ヶ月、一年、十年と歳月が経ちました。もうお婆さんの寿命はあと一年も持たないでしょう。そんなときお婆さんは、とうとう大発見をしました。なんと放射性物質を吸収する物質を発見したのです。お婆さんは歓喜のあまり気絶してしまいました。そう、お婆さんが一生をかけて行っていた研究は、この物質を発見することだったのです。
 それから数日が経ちました。夜「ガタっ、」という音で目をさましました。お婆さんが襖からのぞいてみると、お爺さんが涙を流しながら自販機を片付けていました。そしてお婆さんは気付きました。この自販機を流したのも、ペットボトルに放射性物質を入れたのも。お爺さんは自分の研究が成功してほしいからこんなことをしたのだと。お婆さんは感動で一日中泣きました。それをお爺さんは嬉しそうに眺めていました。
 お婆さんは足腰が不自由で立つのも困難な中、記者会見にのぞみました。記者にこの物質の元素記号を聞かれるとお婆さんは堂々と

              『 I   (愛)』

と言いました。めでたしめでたし。



 昔話の口調のパロディを交えつつ、内容は当塾では珍しい理系寄りの内容!パロディ口調は良いとしても、理系ネタで起承転結と繋いでいくのは難しそうだなと思ったものの、終わってみれば見事な連携でした。

 しかも放射性物質を吸収する物質の発見という現在の日本が抱えている問題も意識しつつ、夫婦愛の話に昇華させるという見事な展開。元素記号のI(愛)にはちょっぴり感動しちゃいました。

塾長

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