今が一番楽しい時
MISAKI(高1)
宿題本当に終わらない。と思いながらもだらだらとシャーペンを進めていた。急に影ができたと思い顔を上げる。
「おはよ」
そう言ったひろが目の前に立っていた。
「おはよ。」
そう言ってまた宿題の方に顔を戻す。ひろも隣の席に座って宿題を広げ始めた。
この夏休み、午後練の時は毎回こうやって早く来て勉強をするのがルーティンになっている。お互い無言で三十分ほどたったくらいで
「お腹すいた」
と言い始め売店でご飯を買う。今日は春雨スープにした。お湯を入れ待っている間も食べながらも毎回くだらない話で盛り上がる。
なんでこんなに毎日年間三百三十日くらいは会ってるのに話が尽きないのか不思議でしょうがない。でも私には、夏休みの練習の前にただ隣で勉強してご飯食べながらくだらない話で盛り上がるこの時間が、なんだか一番あったかくて楽しい時間だったりもする。
秋ごろに書いてもらったもので、夏休み中のワンシーンを書くという課題に対する作文です。
学生時代の何気ない日々の幸福なんて、大概の人は通り過ぎてから気づき、ああ幸せだったんだなぁなんて呟くものですが、高1で既に気づいているMISAKIさんは随分と大人な部分を持っているのかもしれませんね。僕などは大切だということを知らないまま、ただただ浪費していた高校時代でしたから。
そんなMISAKIさんは人との距離感を描くのが上手な人で、これまでも友人との時間が作り出す心地よさや信頼感など、そこにあるけれど目には見えない気持ちや空気に光を当て形を与えては作文にしてくれました。
人と人の間は真空ではなく確かに何かがあって互いを繋いでくれている。その繋いでくれているものを描くことで、その人たちの距離感がなんとなく見えてくる。美沙紀さんの文章を読んでいるとそんなことを考えさせられます。
ちなみにこの作文は、他の生徒の間では理想の友達関係、こんな友達が欲しい、と支持されていました。
短い文章ながら、印象に残る作品でした。
塾長