作ろうクリスマス

HIDEHIRO(高1)

 ここは北極の何処か。サンタクロウスは今年も眠らず休まず、エナジードリンクを片手にエルフ達と世界中の子供達のプレゼントを準備していました。そしてクリスマスが一週間前に迫った今日事件は起きます。
「うっ」
 長年一人でプレゼントを準備していたサンタクロウスはカフェイン中毒と過労で死んでしまいました。

 クリスマス直前で困ったエルフ達は話し合い、自分達でクリスマスをする事を決めました。プレゼント作りは毎年やっていたのですぐに終わりましたが、プレゼントを配るにはエルフ達の小さい体では一日で世界中を回りきれません。そこでエルフ達はソリを複数作り、それぞれが分かれてプレゼントを配る事にしました。そしてクリスマス当日エルフ達はプレゼントと良い子リストを持って北極から飛び立ちます。良い子リストと悪い子リストを取り間違えているとも知らず。エルフ達は悪い子にだけプレゼントを配ってしまったのです。

 クリスマスイブの翌日の朝は子供達の泣き声で始まりました。悪い子ばかりにプレゼントが配られ、良い子には全くプレゼントが配られなかったのです。エルフ達は絶望しました。新聞には『プレゼントが良い子には配られず』の文字が。皆が落ち込む中、ふとエルフの一人がサンタの遺品の中から巻き戻し時計を見つけました。コレならプレゼントを配り直せるかもしれない。エルフ達は巻き戻し時計と今度こそ良い子リストを持ち、イブに戻りプレゼントを配る事を決めました。悪い子のおもちゃを没収しそのまま良い子に配る、それを世界中で繰り返し続け、何とか世界中の良い子にプレゼントを配り終えました。

 翌日の朝は子供達の喜びの声で始まりました。こうしてエルフ達は世界中のいい子にプレゼントを配り終えたのでした。しかしエルフ達には何かが足りません。ホウホウと笑う赤くて大きなエルフ達の友達はもういないのです。それに来年も自分達でプレゼントを作りそれを一夜で配り終えるなんて重労働できません。困ったエルフはサンタのクローンを作成しました。それがエルフ達へのクリスマスプレゼントになったのでした。めでたしめでたし。




 クリスマスに向けて「サンタクロースがいる世界観のもとでハッピーエンドの物語を書く。また読者の対象年齢を自分で決めて書く」と言う条件で書いてもらいました。

 HIDEHIRO君が書いてくれたのは子供向けの物語。

 日頃からHIDEHIRO君が書く物語は、厳しい現実を意識してか、ハードだったり悲しかったりとバッドエンドのものが多いのです。しかし、今回の課題はハッピーエンドが大前提。かなり悩みながら書いてくれました。自分が発想しやすかったり、好ましかったりする結末とは違うものを考えるということは、これまでのスタイルや癖を使えないので、こちらが思っている以上に大変だったようです。
 そんなHIDEHIRO君が考える物語だけに、ハッピーエンドとは言いながらもそこに至るまでには、サンタが突然亡くなったり、良い子にプレゼントが届かなかったりとすんなりは幸福が訪れません。特に最後のサンタのクローンを作るという発想は、これはハッピーエンドなのか?という意見も聞こえてきそうです。そのあたり、HIDEHIRO君本人に聞いたところ、これはエルフにとってのハッピーエンドということでした。なるほど、正義も幸福も立場が変われば、その内容も変わるもの。やはり、現実に対する厳しい捉え方は健在でした。それでも、これまで継続してHIDEHIRO君の書くものを読んできた僕から見れば、今回はよく挑戦してくれたと思います。いつものHIDEHIRO君とは違う、彼の中に確かにある柔らかい部分を見つけることができました。一つ引き出しを増やせたのではないかと思います。お疲れ様!

塾長

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