リレー作文「私の色」
起 SAHO(小6)
「はあ、もう十月なのにどうしてこんなに暑いの?」
ハクション!
「はあ花粉症、まじ死んでほしい…」
ハクション!ああ早く家帰ろ。
ガチャガチャ。パチッ。うわ、いった、はあ秋って静電気。これも嫌なんだよな。
ああ疲れた。テレビでも見るか。ピッ。
「うわ~すごいですねこの秋刀魚!それでは次は○○公園の紅葉が見ごろを迎えています。きれいですね!春は桜。秋は紅葉なんて最高ですね。」
ピッ、ふーん紅葉ねえ。
承 AN(小6)
「どうせ暇だから、紅葉でも見に行こうかな」
と思い、家から近い公園に行くことにした。
「わ、すご、」
公園は屋台などをやっていた。でも、一番最初に目に入ったのは紅葉っぽいものだった。なぜか葉の色が赤くも黄色くもなかった。
「なんか買って帰ろ。」
私はつまんないなと思いながら、屋台を見て回った。
結局、何も買わないで帰ることになった。そして、すごく時間がたっていることに気が付いた。早く帰って勉強しよう。と思った。
転 SAHO
あっ、帰るついでにハンドクリーム買い行こ。静電気やばいからねー、でも、もう五時でこんなに暗いのか。ん?
「おーい!」
「あっ!なにしてるの?」
「最近乾燥やばくてハンドクリーム買いに行こうと思って、そっちは?」
「塾帰りだよ~。それでちょっと寒いから帰るね、また明日学校で、バイバーイ。」
確かにもう寒いし暗いもんなー。早くしないとお母さんにキレられるかも、さっさと買いに行くか。
うーんどれにしよっかな…決まりそうにないし、ニベアでいいや。あっリップも、あ、ヘアオイルも…ってこんな買っちゃだめだ。
「ありがとうございましたまたお越しくださーい。」
ガチャ。ビューうわ暗っ寒っ、風強いし、ってか今六時、やばいわ、そりゃ暗いわ。急げー、ほんとはこっちの道の方が近いけど五時以降は通るなってお母さんから言われてるし、こっちから帰るか。遅れた理由これにしよ~
ピピピ…やべお母さんだ。
「もしもし?まだ帰ってこないの。」
「今帰ってる途中!」
「あっそう、もう暗いから早く帰ってきなよ。」
ピッ。あっもう駅前か、ああ信号が赤になっちゃった。
信号に気を取られていたが、もう夜なのになぜか明るい、そう思って周りを見渡してみると沢山の木にイルミネーションが張り巡らされている。
「うわあすごいなこれ。」
結 AN
イルミネーションの近くには大勢の人が集まっている、この人込みの中通れるはずがないと思った。ただ、あまりにもきれいだったので目が奪われていた。なので、混んでいても良いと思い、その流れに入っていった。流れに入ると、写真や待ち合わせをしている人たちが多くいた。私も撮ろうと思い、いい木がないか探した。
「あの、赤と黄色の、凄くきれい。」
「分かる、癒されるよね」
「もう一回撮りに行く?」
「いこっ」
と騒いでる女子高生がいた。
「赤と黄色…見に行ってみよ」
私は見に行くことにした。
行ってみると、すごい迫力で輝いていた。ただただ私はそれをずっと見つめていた。誰かわからない電話も無視して。
二人で交互に書く形をとったリレー作文のご紹介です。
「赤か黄色のいずれか、あるいは赤と黄色の両方が出てくる物語を書いてください。」という、やや抽象的な課題に対して書かれたものです。
物語を書くにあたって、黄色にせよ赤にせよ何か具体的な題材を決めたいところですが、リレー作文中には特に相談する時間はありません。二人は文章のキャッチボールをしながら互いの文章だけを頼りに書き進めていきます。いつのリレー作文でもそれは同じことなのですが、今回は特にそのやりとりが感じ取れる作品となりました。
起と承の部分を読んでみると、起を担当したSAHOさんはどうやら木々の紅葉の話を使って赤と黄色の物語にしようとしているように見えます。ところが、承のANさんは「紅葉っぽいもの」という表現を使いながら、紅葉で進めることを拒否!(笑)これを返されたSAHOさんは、新たなアイディアを出さざるを得ない状況になりました。
転のSAHOさんは悩みつつも、公園からの帰り道にイルミネーションを見つけることで今後こそ赤や黄色につながる題材を提示します。加えて、友達やお母さん(声だけですが)の登場で物語の世界を少し広げつつ、主人公のキャラクターの肉付けにも成功しています。
そして結。今度は転のSAHOさんからのパスを全部受け止めて、イルミネーションを赤と黄色の材料として物語を成立させてくれています。最後にはお母さんからと思われる電話を無視する場面を加えることで、イルミネーションに対する主人公の感動の大きさを描きつつ、主人公のキャラクターをより血の通った存在にすることができています。
今回二人の掛け合いを見ていて、リレー作文ならではの難しいパスが来たときに諦めずに考え続けて新しいアイディアを思いついたり、相手のパスがより効果的になるよう工夫してくれたりと、一人で書くときとは違う良さを感じることができました。
塾長