変わってゆく景色
YUYA(中3)
「お久しぶりです。」
久しぶりに上田先生に会った。リモートではなく実際に会ったのだ。3年ぶりのため最初は何を話せばいいか分からなかった。
駅前から歩き出した。最初の印象は賑やかだと思った。渋谷や原宿とは違う、何か少し大人な雰囲気を感じた。
高架下近くの花屋など「昔からあったな」と感じるところはあるのだが、それ以外はあまりピンとこなかった。その花屋は暗い高架下から、急に明るく華やかになるため、印象が強かった。
先生が、
「あのドーナツ屋さん無くなってるじゃん。」
と言った。僕もそのドーナツ屋さんに行ったことはある。ただ、おそらく一度しか行ったことがないのだ。その1回が僕にとっての初めてのこの塾での授業だったのだ。その思い出の地がなくなっていることはショックだったが、この思い出は大人になっても忘れないだろうと思った。
コロナ禍でオンライン作文教室という形を取るようになって3年近く経ちましたが、久しぶりに、生徒のYUYA君と教室のあった自由が丘の街を歩きながら、作文の題材探しをしてみました。
短いながらも、実際に体験した中で書くことの大切さを感じさせてくれる作文でした。
例えば高架下から花屋さんに至る過程で明暗差を感じ取れていることや、そのギャップゆえに花屋さんが華やかに感じられるのだという気づきは、実際に歩いた後に書かれた作文だからこその具体的な描写です。やはりリモート授業だけでは足りない部分があると感じてしまいます。
ところで、僕にとってのドーナツ屋さんは散歩の際に何度も訪れた場所でしたが、YUYA君にとってはたった一度、しかも当塾の最初の授業の際に訪れた重要な場所だったのですね。このことは、同じ景色でも見ている人によって、その見え方や意味が異なることを思い出させてくれました。
YUYA君の作文を読むことで、改めて生徒一人一人が様々な気づきや感じ方をしていたのだと知りました。同時に、たくさん歩いて、サラッと書く感覚が懐かしくも楽しくて、ストレスを少なくして書く必要性も再認識させてもらいました。
今後の塾の活動の中で役立ちそうなヒントをたくさん見つけられた、YUYA君の作文と散歩でした。
塾長