心の整え方
YUYA(中2)
「『心が整う』ってなんだろう。」
と僕は彼に問う。
「知らね。」
と彼は素っ気なさそうに返す。今日はあまり機嫌が良くないみたいだ。
彼と僕が知り合ったのはちょうど一年前、僕が彼と同じ塾に入塾したのがきっかけだ。元々頭が良くない僕だったが彼と仲良くなり、勉強を教えてもらうなどして今は同じ志望校を目指す小六だ。そして今は十二月、明日から冬期講習だ。
約一ヶ月後。
今日は一月三十一日、そう明日は受験当日だ。塾が終わりいつも通り二人で家に帰っているが、緊張しているのか口数が少ない。
「じゃー、僕ここで。」
と僕が言い、歩き始めると、後ろから声がした。
「おい!明日がんばろーぜ。」
「うん!」
彼のおかげで安心して僕は眠れた。
「これから問題用紙を配ります。」
「次に解答用紙を配ります。」
僕の前に二つ冊子が置かれる。「ついに来た。」と僕は興奮しただけで緊張していない。「がんばろーぜ。」この一声で僕の心は整えられた。
「さあがんばるか。」
小声でそう言い、僕はペンを持った。
「整える」という言葉を聞いて考えることを自由に文章にする、という課題に対して書かれた作品です。
言葉数は多くなくても一言で通じ合えてしまう友人って良いものですね。別れ際にさらっとそれができる友人も、ちゃんと受け止められる主人公も格好良いです。この物語自体は創作ですが、YUYA君が経験してきた中学受験や友人とのやりとりが活かされているのでしょう。短い文章ですが、YUYA君が良い友人関係が築ける人だということ、そして、それを大切にしている人だということが伝わってきました。書き手の価値観や人柄が爽やかに伝わってくる素敵な文章でした。
塾長