無題(大切な人について)②
HARUTO.H(中2)
「ブー」
消音モードにしていた携帯がわずかに動く。何だろう?そう思いつつ携帯を開くと、メッセージが届いていた。内容は、以下の通り。
「最近、人生がつまらないんだよね。」
このたった一文が届いていた。送信主は、僕の友達であり相談相手。仮に名前をKと名付けよう。互いが相談をしあっている。
そんなKのメッセージに少し違和感を感じた。いつもは、僕への気遣いなのか少し楽観的に相談をしてくるのだが今回はストレートに悩みを言ってきた。
嫌な予感がした。
僕は、何かに急かされるように返信を書き始める。しかし、いつも長文で送っているためその癖がついてしまったのか、なかなか書き終わらない。
やっと書き終えられたのは、大体四十分後。急いで送信ボタンをタップする。
未読…未読…
まあ、そりゃあすぐに見るはずないよな。
三分程するとやっと既読になった。読んでいるのか少しの間画面の中で沈黙が訪れる。口火を切ったのは、Kの方からだった。
「ありがと…やっぱはると人の事泣かせるの上手いよ。やっぱり止めた。いつもより返信が早かったね。なんでそんな必死なの?」
だって、大切な人だから。そう打ち、指を送信ボタンの上に滑らせる。しかし、タップしたのは削除のボタンだった。そして、打ち直す。
「初めてできた、唯一の相談相手だから。これからも、よろしくな。」
「どうしたの急に(笑)よろしくって。」
「いや、まあね…」
「相談聞くよ?」
「おぉ。今度は僕か(笑)」
そんな日常的な会話をする。
あの言葉は、まだいいだろう。来る時(きたるとき)まで胸の奥にしまっておくことにしよう。
「大切な人」が出てくる文章を800文字以内で書いてください、という課題に対して書いてもらいました。今回はテスト形式で書いたため、タイトルはありません。
大切な人を思い浮かべる場合、自分に何かを与えてくれる人、何かをしてくれる人をあげる例が多い中、HARUTO君が書いてくれた大切な人は互いに対等な関係の友人でした。どちらか一方が頼るのでも支えるのでもない関係性が印象的です。
また、実際の経験をもとに書かれた作文だけに、携帯を介しての文字を使った会話がリアルでテンポも良く魅力的でした。短い言葉の裏で互いの感情が交差し理解しあっている様子がよく伝わってきます。
そして何より、中学2年生にして信頼できる友人を持っていること、言葉を大切にしながらコミュニケーションを取れていることに感心しました。
塾長
飾らず自然体で大切なことを語れるってすごい文章力だと思いました。Kさんみたいな学生の方が、人生がつまらなく、ないかな、くらいに世の中を面白く見えるように、頑張ります。
コメントどうもありがとうございます。
そんな風に読んでいただけて嬉しいです。
また、頼もしいお言葉にこれらかの未来が少し楽しみになりました。頑張ってください!