無題(大切な人について)
MISAKI(中1)
「おはよ」
…
えっ。無視?いつもおはよ。って言ったら返事してくれるのに。私なんか悪いことした?ま、たまたまだよね。きっと。
「おっはよ~」
また無視?教室でも無視されるの?私悪いことした覚えないんだけど。私は教室にいづらくなって廊下に出て人気の少ない屋上に向かった。屋上のドアを開けると、冷たい風が顔に当たった。なんでこんなに今日は無視されるんだろう。なんか嫌な事しちゃってたら教えてくれればいいのに。
気づかないうちにチャイムが鳴っていたらしい。急いで教室に戻るともう一時間目が始まっていた。私は身を縮こませながら自分の席に着席した。いつも一緒にいたメンバーがこっちを見ながら小声で話をしている。きっと私の悪口だろう。そんな気がした。私はもうみんなから嫌われたんだと思っていた。今日はお母さんとけんかして家を出てきたし皆からは嫌われるし。
あっという間に一時間目から四時間目までが終わり、昼休みになった。いつもは教室で皆とわいわいお弁当を食べているけど今日は教室にもできるだけいたくなかったから私はお弁当を持って一人で食べるにはちょうどいい屋上へ向かった。
お弁当を食べ終えて教室に戻ろうとしたら、階段の下にいつも一緒にいるメンバー達がいた。私は別の階段から戻ろうと思い、別の階段の方へ向かおうとした。その瞬間、私は背中から階段を転げ落ちた。体中が痛かったけど何とか起きようとすると、いつものメンバー達が駆け寄ってきて、
「大丈夫?」
「保健室行った方が良くない?」
と声を掛けてくれた。私は急に駆け寄ってきてくれたメンバーに驚いて、何も言えないまま保健室に連れて行ってもらった。
保健室で傷の手当てをしてもらった後、思い切って聞いてみた。
「なんで今日私のこと無視するの」
皆はきょとんとした。
「えっ。無視してたのはそっちじゃん」
「お互い勘違いしてたってこと?」
「なにそれぇ~」
いつもの会話が戻ってきた。
「大切な人」が出てくる文章を800文字以内で書いてください、という課題に対して、授業内の60分で書いてもらいました。今回はテスト形式で書いたため、タイトルはありません。
MISAKIさんはフィクションを使って、自分の考える大切な人を表現してくれました。大切な人について文章を書こうとした時には、その人がどんな人なのかを直接的に説明する場合が多いものですが、MISAKIさんは少々違う方法をとりました。彼女は、大切な人が誰なのか?どのような人なのか?をはっきりと書く代わりに、物語の中で、いつも自分と一緒にいる友人達との関係が突然壊れたら自分がどのような気持ちになるのか、どのような行動を取るのかを書くことで、その喪失感の大きさを表現しました。それによって友人達が自分にとってどれほど大切かを浮かび上がらせることに成功しています。
今回はMISAKIさんの発想の素晴らしさに感心させられました。また課題を出してたった60分で、これを書いてしまったこともに驚きました。
塾長